イン ザ・ミソスープ
2009.04.21
![]() | イン ザ・ミソスープ (幻冬舎文庫) (1998/08) 村上 龍 商品詳細を見る |
噛む。刺す。斬る。焼く。裂く。血を飲む。猟奇的ともいえるこの行為を人に対して行うとどうなるのか。それを事細かに表現されているさまは、かなりグロテスクです。本を読むときはいつもシーンを想像して、それを楽しむのだけれど、さすがに想像をすることを拒否しました。これはムリです。腸がキューってなります。
実はこの小説、あの神戸児童連続殺傷事件と同時期に連載していた小説のようで、巻のあとがきに、「小説が現実に、現実が小説に侵食して、小説生活の中で初めて現実との区別がつかなかった」という旨の一文が掲載されていました。
小説だからだろうけど、この殺戮を行ったフランクという人間を、さほど悪いと思わない自分がいる。むしろ『ありえる』と思ってしまう。この小説は、『ありえない』世界から『ありえる』世界に移り、そして現状について考えさせられる。その世界の遷移により、「それは嫌だ」と自分の中でなんらかの抵抗が生まれる。それが自分の生活のパワーになってるんですよね。そのことに気づいたとき、あぁこれが村上龍ワールドなんだろうな、と思いました。グロいの大丈夫ならお勧めしたい一冊です。
ちなみに、神戸児童連続殺傷事件の犯人の日記があったので、全部読んでみました。そこには、事件の詳細が書かれており、この小説以上の殺戮表現が、本気で怖いです。これが現実に起きたことを考えると、同氏が区別がつかなかった、言っている意味がすごくわかります。