イカスミスパゲティ
2010.05.13

イカスミパスタは見た目がどぎつい。一口頬張ると、体内は黒に染められていく。
だけど、その味が美味しくて、見た目、体内の真っ黒さなんか気にならなくなる。
一巻き二巻きと動く右手を見ながら、食べ物の色に人間は染められやすいな、とすごく悲しくなる。
つい最近、5,6年ぶりの友人に出会った。彼女は1982年生まれ、今年で28になるであろう、世間的には大人の女だ。
当時僕は彼女に随分と告白されてきたにも関わらず、お付き合いするには至らなかったのだが、そこには理由があった。
そんな彼女の、
見た目とは裏腹に、園児のように甘えるその姿、
そんな彼女の、
稚拙な文章で書かれたメール、
そんな彼女の、
今その瞬間だけという楽観さ、
子供は嫌だ。そう思う僕の心と彼女の思いは向き合えなかった。
だけど彼女は温かく平和で、写真というアートをやっていた姿は素晴らしいな、尊敬するなぁ、と思ったことを今でも覚えている。
数年以上会わない人同士が話す内容は、今どこで、何をして、どんな人といるのか、という話題につきる。それは大抵、当時の印象から期待する将来像とのブレのなさに嬉しくなったり、いい意味での意外性に驚いたりして楽しむものだとこれまで学んできた。
きっと彼女も、「今が楽しかったらええやん」とあほみたいに平和に笑い、歯科助手の仕事を続けながら、写真を撮り続けているんだろう。
そんな楽しい姿を想像する僕の期待が崩れていくと感じたのは、彼女から自分は精神病になったと聞いてからだ。
電車がこわいのだという。会社にいけない日が続き、仕事もなくなり、体を売る事でしか生計をたてなくなっているのだという。
そして、自殺未遂。傷跡が僕を青ざめさせる。
なぜこうなってしまったのか?もう戻れないのか?思わず出た言葉がそれだった。
彼女が物心ついたときには、悪い事をすると、父親が母親を気を失うまで殴り続けるのだそうだ。逃げようとして、それが悪化する事が怖くて抜け出せない。そのジレンマが薬によって解消されているのだという。
彼女に近しい友達はいない。友達は、親でもあり、彼氏でもあり、全ての愛情を一人から得ようとするあまり、人が離れていく。
ましてや日本において、DV、精神病、自殺未遂、風俗というキーワードは人を遠ざけるものとして十分な存在で、なんとかしてあげたいが、僕は何も言えなかった。
正反対の環境で幸せなところで育った僕にとって、ここに染まるのが怖くて言葉を発することを躊躇していた。
「私と関わると闇にのまれるから、バイバイ」
この時、僕の中では、なんとも悲しく、後味のわるい思い出となった。
だけど、僕の携帯は
「寂しい」
「上辺の優しさなんていらない」
「家族から解放して欲しい」
「こんな私をだれが受け入れてくれる」
「死にたい」
というメッセージを受信しつづけている。
今もくるくる右手のフォークを回して食べているイカスミパスタのように、彼女によって僕が闇に浸るのも時間の問題かもしれない。。。
テーマ : なんとなく書きたいこと。。 - ジャンル : 日記
タグ : 根本的に 彼女自身が 向きあう必要がある気がするが
コメント
考えた事ないわー。
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教師と言う立場、殺人を犯した犯人、犯人の家族などの語り手が何となく今回のブログに対する答に似たような。
人が言葉に出してはいけない禁句を28になっても出すのは甘え?勇気?
竜男は、どうよ?